季節は8月  ひぐらしの鳴き声も珍しくなくなってきたこの時期、前原圭一は家で退屈を持て余していた。
 学校が夏休みに入ってから数日がたつが、その間部活を全くしていない。
 もともと魅音の部活は学校が休みの日でも関係なく活動している。
 だけどこの数日は部長である魅音の都合が悪いらしく、部活がない日々が続いている。
 魅音の刺激的な部活に慣れた圭一にとって部活のない毎日は何か物足りなかった。
 
 そんなある日、いつものように家で退屈を持て余している圭一の元へ部長である魅音から1本の電話が入った。
 突然の部活開催の知らせである。
 不意の知らせに驚きを隠せなかった圭一であるが、それ以上に待ちかねていた部活の話である。
 楽しみでないはずがない。
 圭一は心が昂ぶっていくのがわかった。
 
 ここ数日部活を開催していなかったのは今回の部活の準備の為だったのだ。
 魅音が周到に準備した部活・・・
 それはあの園崎魅音が本気という事だ。
 この恐ろしさが分からない圭一ではない。
 
 魅音「ところで圭ちゃん、いつまで家で居てるつもり?」
 
 
 魅音「もう部活は始まっているからね。

 
 
 圭一は魅音の言葉にドキッとさせられながら慌てて家から飛び出す。
 その瞬間、圭一に向けて大量の弾が発射された!
 バババババッ!!
 
 圭一「うわぁ、危ねぇっ!!!」
 
 見ると、幽霊とも妖精とも言い難い人形達が圭一に向かって弾幕を展開していた。
 圭一「なるほど・・・こういう事か!」
 圭一「今度の部活は弾幕シューティングという事か。面白れぇ!」
 
 普段見ぬ異形の存在に驚きながらも、魅音の仕業に違いない・・・と圭一は思った。
 何せ待ちに待っていた部活である。
 この先に待ち受ける対戦相手に不安を覚えるどころか逆に闘志を燃やすのであった。
 
 圭一「今度の部活は弾幕だ!」
 
 
 この時はまだ、この異形の存在が部活メンバーに大きな混乱をもたらす事になるとは思っていなかったのだ。
 
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 勢いよく家を飛び出していく圭一の姿を見つめる影があった。
 ???「・・・・」
 
 ひぐらしが鳴いていた。
 夏の暑い日ざしは手加減を知らず、いつもと変わらない光景がそこに広がっていた。
 
 いつもと変わらない雛見沢。
 その雛見沢に待ち受ける部活メンバー。
 
 ある者は静かに、ある者は悠然と、皆全力を賭して挑んでいる。
 
 その影はそんな中にいた。
 そして、その光景を見ていた。
 影は呟いた。
 ???「楽しそう・・・」
 その手には妖精に似た人形があった。
 
 後にFinal Matchと呼ばれる長い、長い1日が今始まった。